
溺れる愛
第16章 冷雨
それからは、学校でもお互い目も合わせる事もなく
毎日の様に連絡が来ていた携帯も
すっかり鳴らなくなった。
芽依の心の中にはぽっかりと穴が開いた様な気分で
空元気とはこの事かというくらい変に明るかった。
相変わらず誰も寄せ付けず、ただ席で本を読む那津。
それに目もくれずにキャッキャとはしゃぐ芽依。
これで良かったのかは解らない。
だけど、那津と関わる前に戻っただけだと自分に言い聞かせて。
だけど心は着いていかない。
それにすらも目を逸らして、出来るだけ考えない様にしていた。
那津を憎むことで自分を保っていた。
こうして何も話さずいることが
周りの人間からしたら当然の光景で
芽依と那津の関係を知る者はここには誰もいなくて
それが嬉しくもあり悲しかった。
結局何も残らない関係だったのだ。
それほどまでに、那津とは何も築いてこなかった。
信頼関係も何も。
ただ残ったのは肉体関係の痕だけ。
そうこうしているうちに時間はどんどん過ぎていき
もうすぐ春休みを迎える。
二年生になれば、クラス替えをして
もう自然に那津のことは忘れられる──
そう思っていた……
