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溺れる愛

第17章 社会人編スタート





「ちょっと!聞いてます!?」



『え?あぁごめん。聞いてるわよ。
次の案件の事でしょう?確か女性客を獲得するのが狙いなのよね』


「もぉ~芽依先輩、たまにどっか飛んでますよねー」


『はは…ごめんね。続きしようか』





いけない。

またあの事を思い出してしまってた…。



あれから8年経った。
私ももうすぐ24歳になる。


あの後私は、波瑠さんのところへ行ったりしたけれど
那津の足取りは掴めなかったんだ。


そしてこれだけ月日が経ってしまえば
そんなに考えることもないと思うかもしれないけれど

どうやら那津が残したあの携帯。

解約されてないみたいなんだ…。



もしかしたら連絡がくるんじゃないか…


そんな淡い期待が常にこの8年間
私に付きまとっているの。


こんなだから、次の恋愛なんてとてもじゃないけど出来なくて

それなりに何人かに交際を申し込まれたりしたけれど
見事に全て断ってしまったんだ…。



ボーッと窓の外を眺めていると
また目の前に座る後輩の菜々子ちゃんにムスッとした顔を向けられてしまった。



「ほらっ!また飛んでます!
ちゃんと聞いてくれないと困りますぅ」


『ははっ、ごめんね。もう飛ばないから
続きしよう?』


昼下がりの会社近くのお気に入りのカフェで
打ち合わせと称してこうして菜々子ちゃんとお茶をするのが
何気に好きだったりする。


私は高校を卒業後、進学してそのまま
インテリアコーディネーターの資格をとった。

そして今は“ふたばデザイン事務所”で働いている。



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