溺れる愛
第19章 思っていた以上に
あの時は緊張してたし、それどころじゃなかったっていうか…!
物凄く美味しかったけれど、そんな事を言える余裕が…!
少し焦って言葉を探していると、横から菜々子ちゃんのキャーキャーと興奮した様な声が飛んでくる。
「もうお二人ってそういう仲だったんですか!?」
『ちょっ、菜々子ちゃん!違うよ!』
「あれ、酷いなあ。そんなに否定しなくても」
『もう、田所さんまで…』
なんだかこの2人といると怖いかも…
私、凄く苛められそうな気がするよ…
そういう点では気が合うのか、二人はこの後も
私をイジる度に一致団結してしまい
私はせっかくのランチなのにどっと疲れた気がした…。
レジでお会計を済ませる時、田所さんにご馳走すると何度も言われたけれど
それは断固として拒否してしまった。
だって今は仕事中だから…。
そんな事をしていると、またクスッと笑われて
「泣きはらした様な顔をしていますね。
だけど健気な人は好きですよ」
と、コソッと耳打ちされて
やっぱりお見通しだったか…と思うと
益々田所さんがわからなくなった。
どうしてだか、泣いた理由すらもわかっているような
そんな口調だったから。
この人って一体…。
この後、田所さんは仕事で居なくなったので
少しだけ安堵の息を洩らしたのは内緒だよ。