溺れる愛
第19章 思っていた以上に
改装工事も順調に進み、大きな問題も起きないまま
私の初のリーダーを務める大事な案件が終わりを迎えようとしていた。
『あとは、明日の事前チェックで完了ですね』
「はい!いやぁ、無事に終わって何よりですよ」
『そうですね。本当にお疲れ様でした。』
工事業者の人たちと現場で顔を合わすのも今日が最後。
頭領さんに挨拶をしながら差し入れを手渡して
出来上がったばかりの休憩室をざっと見回す。
男性も女性もくつろげるように、お店風ではなくて家をイメージしてデザインした。
窓際には畳のスペースを作って、デスクワークにはつき物の腰の痛みや脚の浮腫を少しでも緩和出来たらなと思ってご提案させて頂いた。
照明も白ではなく黄色で、落ち着く色合いに。
テーブルや椅子なども、全てウッド調の物を用意した。
うん…我ながら悪くない。
頑張ってデザインを考えて、一から作って出来上がったこの空間は
何とも言えない高揚感を与えてくれる。
やっぱりこの仕事が好き。
敢えてカウンターキッチンを置いたその椅子に腰掛けて
社員になった気分で目を閉じる。
うん…いいかも。
私は完成したての休憩室で一人、うっとりとしながら達成感を味わっていた。