溺れる愛
第3章 喪失
空いている方の手で、芽依の頬にそっと触れて
まるで大事な物を扱うように撫でながら
「まぁ、言うことを聞かないペットを服従させる楽しみも悪くないな」
行動とはまるで反対の、その冷たい声音に身体がビクッと震える。
(何なのこの人…本当に私と同い年…?なんでこんなに歪んでるの…)
それまで頬に優しく触れていた手がそっと首元にあてがわれると同時に
グッと体重をかけられて思わず目を見開いてしまう。
『かはっ…ぁぐ…!』
(く…るし…)
「でも、命令違反は許さないけどな。
わかってるよな、芽依?」
(怖い…!殺される…!?)
とにかく助かりたい一心で無我夢中に首を縦に振ると、那津はそれ以上してくる事はなく、パッと手を離した。
自由になった両手で、締められて痛む首を押さえながら、はぁはぁと肩で息をしながら後ずさる。
(何なの…本当に何なのこいつ…!)
「わかったらもう口答えせずに、俺に言われた通りにだけしてたらいいんだよ。下手な詮索もするな。いいな?」
『…っ、あんたの思い通りになんて…ならないっ…』
絞り出すように、震える声をなんとかコントロールして言葉を繋ぐ。
那津はそんな芽依の反応がさぞ楽しそうに
「まぁそのうちお前からねだる様になるだろうけどな」
と、涙ぐむ芽依を嘲笑った。