
溺れる愛
第19章 思っていた以上に
「…携帯……まだ持ってるか?」
『うん…どうしていいかわからなくて…』
「また連絡するから。電源入れといて」
『わかった…』
“また連絡する”
こんな何気ないたった一言が、どうしようもなく安心出来て、凄く嬉しい。
このままバイバイって訳じゃないんだね…
良かった…。
また、那津に会えるんだよね…。
すると、那津が懐から何かを差し出してくる。
「慣れねーモン履いてんじゃねぇよ」
『え……』
その手には絆創膏があって。
普段履かないハイヒールのせいで靴擦れを起こしていた私の足に
気付いてくれたんだね。
こんな一瞬で…。
『…ありがとう』
「…俺も。
それ、してくれてるんだな」
去り際に、那津が自分の首もとをトントンと人差し指で叩いた。
あ…ネックレス……。
那津が去っていく広い背中を見ながら
やっぱり変わってない。
口の悪さも健在だね…。
そんな事を思うと、また涙が溢れた。
