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溺れる愛

第20章 近付けた喜びと陰




「…俺がいつ、芽依を必要だって言った」


「はははっ!顔に書いてあるよ。本当素直じゃないねぇ那津は」



「……書いてねぇよ…」


俺は誠司のこういう鋭い所が好きでもあり嫌いでもある。



「彼女…動揺してたね。
でも嬉しそうだったよ。ちゃんと連絡した?」


「いや…まだしてない…」


「え!?ちょっと…本当にバカ?
八年も待たせてまだ焦らす気?

ネチネチしててキモいんですけどー。」


「…俺だって…どうしていいかわかんねぇんだよ。

もう芽依には会えないって、八年前に諦めてたんだから…」



誠司は、扉から離れて窓際に立って外を見た。



「なぁ…ここまで本当に頑張ったよな、俺ら。

この景色を手に入れたら、好きなことを好きなときにするって

俺にそう言ってたよな」


「…そうだな」


ゆっくりと振り返って、さっきまでの茶化した様な気配は一切なく
真剣な表情で見つめられる。

その顔は、男の俺でも格好いいなって思うほど画になっていた。



「それが、今なんじゃないか?

モタモタしてると…彼女本当に美人だし
誰かに盗られるのも時間の問題だぞ?」


「…そもそも…俺は元から嫌われてる」


「はぁぁ…本っ当鈍いよね。

じゃあ、一つだけ忠告してやろうか」



鈍いって…何がだよ。



「忠告?」



すると誠司は、また面白そうに含み笑いを浮かべて
顎に手を添えてわざとらしく思案するように呟いた。


「芽依ちゃん…確か合コンするって言ってたなぁ…。

あれ?これってでも、誰から聞いたんだっけ…」



何?合コン??



「あ、そうだ!菜々子ちゃんだ。

そう言えば俺も誘われたっけなー。」


「なっ─────」



「本当に、俺が芽依ちゃん貰ってやろうか?」


ニヤリと言い放った誠司のその整った顔に
俺はとてつもなくイラついて

気付いた時には


「お前に芽依はやらねぇよ!」


なんて、すげぇ恥ずかしい事口走ってた…。


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