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溺れる愛

第20章 近付けた喜びと陰





「彼女、すごく美人さんだよね」


「……」


そうだけど、だから何だよ。



「最初見たとき、俺が貰っちゃおうかなーなんて本気で思ったよ」


「…用事はそれだけか」



うるせぇよ、この女好きが。



「あれ?恋のキューピットにそのつれない態度は無いんじゃない?

俺、今回結構手を尽くして頑張ったよ?」



「俺は別にそんな事頼んだ覚えはねぇよ」


「そんな事言ってると…芽依ちゃんを誰かにとられちゃうかもよ?俺とか。」


「冗談は後回しだ。

なんで…芽依と会わせた」



俺が気になるのはそこだ。

別に誠司にそこまで詳しく話した覚えは無い。


なのになんでこいつは、芽依を知ってたんだ?


誠司はクスッと笑って、扉を背もたれに腕を組んで面白そうに話し出す。


「だから言ったでしょ?
恋のキューピットだって。

那津さぁ…もういいんじゃないのか?」


「……まだ…早い気がする」


誠司の言いたい事はわかる…。


だけど俺はまだ、完全な自由を手に入れた訳じゃない。


こんな中途半端な状態で、芽依を手に入れられるなんて思ってない。


それに、アイツは俺の事…嫌いだしな。



「はぁ…そんなだから、八年も彼女を待たせて…。
俺は芽依ちゃんに同情するよ。」


「うるせぇよ。何が狙いだ」


「狙い?
うーん…俺はもう、那津は自分の幸せを考えてもいいんじゃないかって思っただけだよ。

だから、そのためには芽依ちゃんが必要だろ?」



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