溺れる愛
第4章 混沌
ピピピピ……
(…うるさい……)
ベッドから腕だけを振り上げて、そのままバシッと勢いよく目覚ましを止める。
ごろんと横たわりながら、憂鬱な気分でクローゼットに吊した制服を見た。
(学校…行きたくない……)
昨日は、あれからすぐに那津の家を追い出される形で家に帰った。
「もう用は済んだから帰っていい」
そんな一言だけで。謝りもしないで。
(顔を見るのも嫌…)
今でもあのキスの感触が唇に残っていて、
あまりの気持ち悪さに手の甲でゴシゴシと擦りながら
目にはまた、思い出して涙が浮かぶ。
(殺されそうになった……言うことを聞かないと、あの動画をネットに流されて、警察に通報されて、殺されるの?)
その瞬間、那津のあの冷たい目が瞼に浮かんで
ガバッと頭から布団をかぶった。
(あんな最低な奴に…弱みを握られて…。
私、何か悪いことした?どうして私がこんな目に…)
そこまで考えてから、部屋の外から呼びかける母の声に少し気持ちが紛れた。
「芽依ー?起きてるー?朝ご飯よー」
(お母さん……)