
溺れる愛
第20章 近付けた喜びと陰
芽依の家は車で10分あれば着くほど近かった。
こんなに近くにいたのに、誠司の計らい無しでは
一度も会うことがなかったなんて。
世間は狭いようでやはり広い。
俺はそう思う。
「おかえりー!どうだった?」
帰ってきた社長室の中には、当然のように誠司がソファに座って珈琲を飲んでいた。
それを後目に、自分も社長椅子に腰掛ける。
「どうだったって何が」
「だーかーらー。両想いになったんでしょ?
ちゃんと告白した?」
「は?…そんなのしてねぇよ」
「はぁ!?ちょっとマジで信じらんねー…。
何なよなよしてんだよ」
「別に…なよなよなんてしてねぇよ。
それに、芽依が俺を好きだなんて有り得ない」
「…どうして?」
「俺は…あいつに散々な事をした挙げ句
何も言わないで逃げた男だぞ?
そんなの…いくらあいつでも…許してくれねぇよ…」
「はぁ~…仕事では頭の切れる奴なのに
こういう事だけは致命的に鈍いね、那津は。」
「…お前が芽依の何を知ってるのか知らねーけど…
そんな簡単じゃねぇんだよ…」
「あのさぁ…芽依ちゃん。どんな服装でも
絶対にあのネックレスをつけてる。
正直パーティーの時のドレスには、あれは合ってなかった。
なのにそれでもつけてる。
それが答えなんじゃないの?」
それは…俺だって期待した。
だけどそんな都合良くはいかないって…
「本当に、そんな悠長な事してると
俺が盗っちゃうからな?」
