
溺れる愛
第22章 あの頃の君は
『ありがとう…私の…大事なものを…
家族を守ってくれて…ありがとう…』
「芽依……ごめんな…。
ずっと苦しめて…ごめん…」
ギュッと抱き寄せられて、那津は持っていたグラスをテーブルに置くこともせず
床には赤い染みが広がっていた。
だけど、そんな事はどうでもよくて…
離れていた分を全部埋めるかのように
苦しいくらいに強く抱き締められて…
那津の身体が…少しだけ震えていて…
私は、そっと背中に手を回して
トントン…と優しく撫でた。
私も…あなたの様に
包み込む様な愛を送りたい。
泣いていいんだよ。
頑張ったね。
偉かったね。
なんだかその時は、那津が小さな子供の様に思えて
そんな風に思ったんだ。
余りにも、那津が小さく感じられたから。
大好きだよ…。
私は、ずっと側にいるから…。
『…那津……好き…』
「…俺も……ていうか、先に言うなよ…」
『ふふ…ごめんね?』
「…芽依……愛してる」
『私も…愛してるよ、那津…』
