
溺れる愛
第24章 少しずつズレる歯車
菜々子ちゃんの予想通り、担当はまた田所さんで
二人は楽しそうに会話をしていた。
菜々子ちゃん楽しそう。
また菜々子ちゃんをサポートに推薦して正解だったな。
これならいい仕事が出来そう。
「では、次の打ち合わせを楽しみにしていますね」
『はい。いくつかサンプルを用意しますので。
また何かございましたらいつでもご連絡下さい』
「ええ、ありがとうございます。」
そして田所さんは相変わらずの含み笑い…。
多分、那津から訊いているよね…。
打ち合わせも滞りなく終えて、会社を出ようとした時
ロビーで偶然那津と鉢合わせしてしまった。
わ…どうしよう…。
気付かれちゃダメよ。
冷静に…。
「ご無沙汰しております。今回もまた、素晴らしい空間を作ってくれる事を期待しております。」
那津が、あくまで仕事上の挨拶を
柔らかい微笑で交わしてくる。
私も
『ご無沙汰しております。こちらこそ、
ご期待に添えられるよう、精一杯努めさせて頂きます』
深く頭を下げた。
大事なクライアントだから。
今は、恋人では無いから。
