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溺れる愛

第24章 少しずつズレる歯車




私は那津の会社の中庭のベンチに腰掛けた。


身体はそれほど疲れているわけじゃないんだけど…

たぶん精神的なものよね…。


こんなにも人目を気にして
常に気を張っている状態なんて初めてで
多分慣れないことに気持ちが参ってしまっているだけ。


大丈夫。


今だけ頑張れば


この改装さえ終われば…。



その時、走って来る様な足音が聞こえて
ふとそちらに視線を向けると

那津が息を切らしながらこっちに近づいて来ていた。



「芽依…っ、どうした?
どこか悪いのか…?」


『那津…、ダメだよ。人前で…』


「そんな事言ってられるかよ。
最近ずっと調子悪そうにしてたし…もしかして
俺が無理させてる…?」



違う…違うよ。


那津、笑って。


あなたの笑顔を見られたら

何だって出来るの。


疲れなんて吹っ飛ぶの。


笑顔を奪いたい訳じゃないのに…


だから心配かけたくなかった。



『違うわ。本当に仕事が忙しくて少し疲れているだけで
那津のせいなんかじゃない、本当よ』


「でも…無理させてるのは事実だろ…」



そう言って那津が私の頭に触れようとした時───



「那津さんっ!」



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