
溺れる愛
第24章 少しずつズレる歯車
隣から延びてきた腕に、ギュッと強く抱き寄せられる。
『やっ…離して…っ』
「離さない」
那津と違う男の人の腕の中に居て…
やっぱりドキドキなんてしない。
私がそうなるのは那津だけ。
愛してるのは那津だけ。
なのに…この腕を振り解けない…。
押し寄せる不安の波が
目の前の安らぎを求めてそうさせてくれない。
「俺が…俺が芽依を守ってやるから…。」
耳元で、田所さんが低い声で静かに囁いて
その言葉に気持ちが揺さぶられる。
信じている…そう思っていたのに
今は
信じたい
になっていて…。
段々
信じていいの?
って…。
私……那津のこと…少ししか知らない…。
ううん、もしかしたら何も知らないのかも…。
そう思ったら、堪えていた涙が頬を伝った。
