
溺れる愛
第25章 引き裂かれる二人
『失礼致します』
コンコンと社長室の扉をノックして
私は今、勤め先のふたばデザイン事務所の社長と対面していた。
「おはよう、新井さん」
『おはようございます』
手でソファに座るよう促され、挨拶をしてそこに腰掛ける。
すると社長が一枚の紙を取り出して私に差し出した。
「もし良かったらなんだけどね。
最近の君の働きぶりを評価してのことなんだ。」
『えっ…ニューヨーク?』
そう。その紙にはニューヨーク支社への転勤が書かれていて
もし行くならチーフのポストを約束すると書いてある。
「若いうちは何でも経験してスキルを磨くことに意味があると思うんだ。
どうかな?無理にとは言わないよ」
ニューヨーク…
期限は書かれていない…ということは
向こうに永住する可能性もあるという事よね…。
『少し…時間を頂いても構いませんか…?』
「勿論。いい返事を期待しているよ」
こうして私は朝から何とも言えない気持ちで自分のデスクへと戻った。
