溺れる愛
第27章 始まりのさよなら
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あれから私は、引き継ぎ作業と英会話の勉強で
慌ただしい毎日を送っていた。
那津が八年前に残した携帯は
那津の会社へと送った。
私の携帯は、もう解約して
家も引き払って菜々子ちゃんの家に
ニューヨークに行く日までお世話になっていた。
もう那津とは会わない。
会ってしまったら、気持ちが揺れてしまいそうだったから。
そして、
空港には、菜々子ちゃんや会社の人たちが
見送りに押し寄せてくれていた。
「先輩~、寂しいですぅー…」
『やだ、菜々子ちゃん。泣かないでよ。
私まで悲しくなっちゃうわ』
「たまには帰ってきて下さいね」
『ええ、約束する』
そして私は、ささやかな見送りに手を振りながら
キャリーを引いてゲートをくぐった。
さようなら、那津。
どうか幸せになって。
ずっと笑っていて。
ずっと……愛してる…。