溺れる愛
第29章 エピローグ
『那津!早くしないと遅刻しちゃう…!』
「あー…?うん、俺は大丈夫…」
『もう、いつまで寝ぼけているの?
社長がそんなだらしないと、社員の皆さんに示しがつかないでしょう?』
私はベッドでもぞもぞとうごめく那津に段々イライラが募ってきて…
『もう!起きなさい!!』
ガバッと布団を剥いでやった。
すると、嫌でも上半身裸の那津の身体に目がいってしまって…
本当、綺麗な身体…。
って!違うから!
「んー…俺社長だから、誰も何も言わないって…」
『じゃあ私が言う!
ほら、起きて!もう先に行っちゃうよ?』
「さっきからもーもーうるせぇ…牛かよ」
『んなっ!!もう!!』
「あ、もう一頭発見」
『もう!!』
なんてやりとりをして、お互い堪えきれずにクスクス笑ってから
那津は前髪をかきあげながらむくっと起き上がって
爽やかな殺人級のスマイルで
「おはよ」
って言うの。
あれから一緒にこの那津のお屋敷に住み始めて
ちょうど一年が経った。
そこでわかったこと。
それは
那津は朝がとても弱い。
しかもその時だけは甘えん坊。
私はそんな彼が、前にも増して益々好きになっている。
そんな平凡で幸せな日々を送っていた。