溺れる愛
第5章 階段
「ほら…ツラいだろ?楽になれよ芽依」
『んぅぅ…んんっ』
深く口付けられて、全身を激しく弄られて
その熱い舌が頭に直接訴えかけてきているようで…
『イ…きたい…っ』
気付いたときには心の声が口から洩れていた。
先程までは出せなかったのに、こんな事だけは
出してしまっていた。
那津は満足そうに少し微笑むと
「了解」
そのまま深く口付けながら
芽依の感じる部分を激しく愛撫して
易々と芽依を絶頂へと誘った。
『やっんん…んんんーー!!』
びくんっと大きく身体をしならせて
初めて芽依は絶頂を迎える。
(もう……何も考えられない……)
ビクビクと定期的に痙攣する下半身が
芽依が絶頂を迎えた事を物語っていて、
那津はしばらくゆっくりと指をうねらせたあと
そっと引き抜いた。
それと同時に唇も離れて
「どう?初めてイった感想は」
と妖しく笑いながら、芽依の愛液でぐっしょりと濡れた指をぺろりと目の前で舐めて見せた。
『はぁ…はぁっ…』
(……最低…。)
肩で息をしながら返事をする事もままならなくて。
そのふわふわする感覚に暫く捉えられる。
「今日はこれで勘弁してやる」
それだけ言って、那津は身体を起こして
すっかり真っ暗になった部屋に放心する芽依を残して去って行った。
(最低……最悪……。)
自分の事なのに、自分さえも知らなかった女の悦びを欲する自分。
心と身体が、あの一瞬だけ完全に切り離されて
逃げるだとかそういう類の事を思い浮かべることもなく
ただ目の前の快感を求めてしまった。
(信じられない…)
芽依は静かに涙を流しながら
乱れた服装を整えた。