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溺れる愛

第6章 変化





「おはよー!あれ、何か今日目腫れてない?」


『おはよう。ちょっと寝不足気味で…』


いつもと変わらない教室で、桃花と朝のやり取りをして

何も変わらないのに

明らかに変わったのは自分の身体。




あれから結局、リビングに居た那津とは顔を合わすこともなく
逃げるように自宅へ帰った芽依は
その夜ひたすら先輩の写メールを見ながら泣き続け
一睡もする事無く学校へと来ていた。



「大丈夫?なんか顔色もあんまりだよ」


『本当に大丈夫。ありがとう』


心配してくれている桃花にすら、どこか後ろめたい気持ちになる。


好きな人がいながら、違う男に簡単に支配されてしまった自分が情けない。


チラッと事の元凶である那津に目を向けると
彼はいつも通り、誰とも話すこともなく黙々と本を読んでいた。


(誰も想像出来ないだろうな。こいつが本当は悪魔みたいな奴だって)


すっかり目立たない位置を確立している那津は
クラスの悪い意味での空気みたいな存在だった。



(先輩に会いたい…でも会いたくない…)


本当はあの優しい先輩の胸に飛び込んでしまいたいところだが
そこまでの関係には到底なれていなくて
ただの一方通行な想いだけがのし掛かる。


(次は……何されるんだろ…)



恐怖しかなかったのに、どこか期待している自分が
本当に忌々しくて
芽依はぶんぶんと首を振ってその考えを粉砕した。



「何やってんの?」


桃花に怪訝な顔をされて少し焦ったが


『ごめん、ちょっと意気込んでたの』


「えー!?何、もしかして告白するとか?」


『こ、告白!?違う違う!そんなんじゃなくてっ』



(あぁ。やっぱり女友達との会話が今は一番落ち着く…)


周りからは芽依と桃花の会話を聞きつけて
何だ何だと野次馬根性を剥き出しにした友達が更に集まってきて

それがすごく心を落ち着かせた。



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