
溺れる愛
第6章 変化
しばらく女子同士の何気ない会話に花を咲かせていると、
入り口の方がにわかにざわつきはじめ
それにつられて芽依も入り口に目を向けると
そこには思いがけない人物が立っていた。
(せ、先輩っ!?)
友達を数人引き連れて、そこにはあの憧れてやまない先輩が中をのぞき込むようにして立っている。
(どうして一年の教室に…?)
そう不思議に思って先輩を見つめていると
ふと目があってしまった。
ドキンと心が跳ねて、恥ずかしくて顔を俯けて目を逸らすと
この前初めて聞いた、先輩の声が耳に飛び込んでくる。
「あ、芽依ちゃん!」
(え…今、名前呼ばれた…?)
恐る恐る目をむけると、先輩はニコニコしながら手招きをしている。
(どうしよう…!私、呼ばれてる…?)
動けずに固まっている芽依に桃花がすかさず横から茶々を入れてくる。
「ちょっと!芽依呼ばれてるよ!?早くしないと!」
みんながニヤニヤしながら、桃花に背を押されておずおずと先輩の方へと歩を進めた。
(ヤバい…どうしよう…!心臓が有り得ない…!)
胸の高鳴りが呼応して表情にも現れる。
今、自分はとてつもなく顔が紅い。
やっとの思いで先輩の目の前までたどり着いた。
『あ…の……』
(わーーっ!うまく喋れないよぉ!)
皆の視線を背中に痛いほど感じながら
芽依はもごもごと下を向いたまま。
すると、頭上から先輩の優しい声が降ってきた。
「ごめんね、急に。ちょっとだけ話せるかな?」
そう言って、先輩は外の方を親指でクイッと指差して
外へ行こうと合図をしてくる。
『あ…はいっ…!』
皆の冷やかしの声を後ろ手に聞きながら
芽依は先輩の後ろを着いて歩いた。
