
溺れる愛
第6章 変化
「俺ら向こう行ってるからー」
「おう。悪いな」
先輩とその友達が短い会話で別れて
自分は今先輩と渡り廊下の真ん中に立っていた。
「さっきも言ったけどごめんね、急に。迷惑じゃなかった?」
『いえっそんな…!』
(何この状況!!どうしよう!恥ずかしいよーっ)
しどろもどろになる芽依の様子を
先輩が可笑しそうに少し笑って声をかけてくる。
「そんなに緊張しないで。可愛いね、芽依ちゃん」
『えぇ!?か、かわっ…!?』
これで二回目になる先輩からの“可愛い”の一言が
沈んでいた心を一気に浮かせた。
「ははっ。やっぱり俺の思った通りの子だった。
初めて見たときから可愛いなって思ってたんだ」
『え…と…、ありがとう…ございます…?』
(待って!頭がついて行かない!今どういう状況なの!?)
目を合わせることが恥ずかしくて
先輩を直視出来ない。
「バスケ部の後輩に芽依ちゃんのクラス聞いて来たんだ。」
『…はい……』
何気ない会話。
だけどそれが有り得ない程に芽依の胸を高鳴らせる。
那津とは感じることのないこのときめき。
やはり自分は先輩が好きだと確信する。
