
溺れる愛
第6章 変化
「おい川上ー!その子彼女?」
周りにいた俊哉の友達たちに冷やかされ
芽依は慌てて否定した。
『ち、違います…っ!』
顔を真っ赤にして首をぶんぶんと振る芽依に
周りは可笑しそうに笑っていて
そんな芽依に俊哉は
「そこまで否定されると傷付くなぁ」
と意味深な事を言いながら切なそうに笑った。
(え…?だって…先輩…迷惑じゃないのかな…。誤解されちゃったら…)
芽依は困惑した表情を浮かべるも
周りの冷やかしは止まらない。
「川上が女連れて来るのなんて初めてなんだよ。
もしかしたら君のことすごく気に入ってるのかも」
一人の眼鏡をかけた賢そうな先輩がコソッと耳打ちしてくる。
『えっ…!?あの、それ…っ』
「おい!変な事言うなよ!」
俊哉は芽依を庇うようにして立ちながら
周りの人たちにはやし立てられていて
気づけば俊哉を囲うように人が集まっている。
(人気者なんだな…先輩って…)
社交的で笑顔が素敵な俊哉。
那津とはまるで正反対で、頭のどこかでぼんやりと
そんな事を考えていた。
「ほら!もう休憩終わり!練習再開するぞ!」
俊哉の照れ隠しの様な一声に、皆が体育館の中心へぞろぞろと去っていくなか
ふとこちらへ振り返った俊哉が
「さっきのあいつが言ってたこと、本当だから。」
ボソッと呟いて、駆け足で離れて行った。
(え………?)
────君のことすごく気に入ってるのかも────
(うそ…本当に……?)
ドクドクと高鳴る胸を押さえながら
耳に残る俊哉の言葉に身体が熱くなる。
夏の暑さとはまた別の、恋の熱さ。
練習を再開した俊哉とふと目が合うと
彼はニッと少年っぽく笑って、華麗にシュートを決めて見せた。
ドキン───
(ダメ…やっぱり大好き……。)
火照った顔で芽依は小さく拍手を送った。
