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溺れる愛

第6章 変化




4時になり、バスケ部の練習が終わって
皆が帰り支度をしている間
門で待っていてと俊哉から言われた芽依は
そわそわしながら正門の前に立っていた。


(先輩…カッコ良すぎたぁ…。)


初めて見た彼の少年の様な笑顔。
汗を流しながら真剣にゴールを見つめる横顔。
シュートを決めた時の嬉しそうな顔。


どれもこれも胸に焼き付いていて
胸の高鳴りが止まることを知らない。


(それに…あの言葉…)


──すごく気に入ってる──

──あいつが言ってたこと、本当だから──



まだまだ蒸し暑い、入道雲が大きく居座る空を眺めて


(期待しても…いいのかな……)


ギュッと胸の前で手を握り合わせた。



「芽依ちゃん!ごめんね、お待たせ」



後ろから小走りで駆け寄ってくる俊哉の気配に
くるりと振り返って返事をする。



『いえ…っ!大丈夫です…!』


「もう少し時間ある?お礼に冷たい物でもご馳走するよ」


目の前まで来た俊哉が、当然の様に芽依の鞄をふわりと取った。


『え!?あの、自分で…っ』


「いーのいーの。こうした方が、まだ芽依ちゃんを独占出来るだろ?」


また少年の様な、大人っぽい雰囲気とはギャップのある笑顔を見せられてクラッとしてしまう。



サラリと言い放つキザな台詞すらも様になる俊哉に
芽依は益々気持ちを募らせた。


「行こっか」


『はい…!』


並んで歩く気恥ずかしさが嬉しくて。


荷物を持たせている申し訳なさもあるけれど、
今はただただ幸せだった。



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