
溺れる愛
第7章 勉強
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(全っ然わかんない…)
先程からペンを持つ手は止まったまま。
図書室の大きな机に大々的に広げた教科書とノートが
ただ虚しくそこにあるだけ。
今までしていなかった事を、教えも無しにすぐに出来るほど
芽依は勉強が出来る方ではない。
(このままじゃ合宿行けないよ…)
半べそをかきながら、真っ白なノートの上に頭をもたげて
ぶぅたれた様にうなだれる。
辺りは話したことも無い人たちだらけで
とても質問出来る空気ではない。
───マネージャーっつっても簡単な事だけだから。
料理とか洗濯は旅館の人がしてくれるから
新井はタオル渡したり飲み物渡したりしてくれれば
それだけでいいから─────
矢田の楽しそうに語る表情が脳裏によぎって
その後に俊哉の優しい笑顔を思い浮かべる。
(絶対行きたい!ううん、行くんだ!!)
よしっと顔を上げて、各教科の先生から渡された対策プリントに向かうも
やはりやる気だけでは乗り切れる気配は無かった。
(うぅ~…こんな事ならちゃんと授業聞いておくんだった…)
自分の生活態度を反省していると、図書室のドアが静かに開いて
何気なしにそちらを向くと、そこにはあの無表情の那津が立っている。
その瞬間、芽依の頭には電球がピカッと光る
あのお馴染みの閃いた絵が浮かんだ。
