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「再会」と呼べる「出会い」

第20章 見送る人

「お世話になりました」

丁寧に、深々と頭を下げ、
百瀬は店を後にした。
直後

「エミ !」

パタパタと足音を立て
降りてきたかと思うと、
慌てて佐伯がその後を追った。


「お別れは
ちゃんとしとかないと
後で後悔するからね」

次いで次朗が、奥から姿を現す。

「友達 だもんな」

俯き、小さく呟くと
井崎は静かに
またコーヒーを口に運んだ。


ガ タ


「友達ねー …
一度はあの二人の友情を
壊した自覚は ある?」

次朗が
今まで百瀬が座っていた席につく。
そしてすぐ隣に座る井崎の顔を
覗きこむように見つめ、
目を細める。


「あぁ」

井崎は肯定した。

湯気の出る
コーヒーカップを見つめ

「 エミは俺に会うといつも
ミカの話をしてくれた
初めて出来た友達だって言ってた

あいつ
政治家の家に生まれて
俗に言うお嬢様育ちでさ
一般人の中だと
なかなか馴染めなくて」

その口振りから、
井崎が百瀬の事を多少なり、
気にかけていた事が分かる。

「何故
百瀬は一般の公立高校に?
家柄からして
不釣り合いのような気がしたが」

俺は率直に聞いてみた。
想像はつくが、
敢えて井崎の口から聞きたかった。

井崎は
どこまで百瀬の気持ちを
知っていたのか。

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