好きで、好きで、好きで。
第3章 さざ波
「こっちこっち~!」
「もっと早く走れ~!」
「そっちいったぞ!!」
生徒の掛け声が響く放課後のグラウンドに、操と紗理奈と小坂が来ていた。
「へ~じゃあ、小坂君てサッカー部だったんだ。」
「ああ。」
紗理奈の言葉に頷きながら小坂は隣でキョロキョロしている操を見た。
それに気づいて紗理奈が鋭く指摘した。
「操、今は小坂君を案内してるでしょ!」
「ちょっとだけ~~!」
「もうっ。」
あきれたような紗理奈を気にも止めず、操はアッ!と叫んだ。
「優くんだあ~~!」
操がぶんぶん手を振る先に、サッカーボールを蹴る優斗がいる。
紗理奈は慌てて彼女を押さえ、小坂は確かに同じクラスにいたその男を、目を凝らしてみていた。
優斗はチラリと操を一瞥して、反応もせずまたボールを蹴り始める。
そんな彼の姿に、小坂の顔が少し歪んだ。
しかし操本人は気に留める様子もなく、声をかけて自分を見てくれただけで満足したのか、また勝手にテニス部のほうへと歩き出した。
「もう!操~勝手に行かないで!小坂くんごめんね!」
「え?ああ、別にいいよ。」
そういいながら、目はじっと優斗を捕らえて離さない。
隣を歩きながら、紗理奈はその様子を盗み見た。