好きで、好きで、好きで。
第5章 未練と
「…っ…」
ようやく離した唇が、いやらしくぬるりと光っている。
二宮は赤く腫れた紗理奈の唇を撫でると、リビングへと促した。
紗理奈はなにも言わず二宮に続いて靴を脱ぐと、リビングに向かいソファに腰掛けた。
昔と変わらない、モノトーンで統一した部屋。
ぐるりと眺めると、まだ2人で撮った写真が飾ってあった。
お茶を持ってきた二宮が彼女の視線に気づくと、あぁ、と言って嬉しそうに笑った。
「飾ってたんだ…まだ…」
「懐かしいよね。紗理奈、ネズミーランド大好きだったよね。」
二宮は懐かしそうに写真を手に取ると、細くしなやかな指先で優しく撫でた。