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BL~中編・長編集2~

第13章 ~天然男子の純愛~

「せ、せせせ、せん、せんぱっ…」

「あははっ!! 悪い、驚かせちまったか?」

冷たい感覚の正体は、先輩が持っているジュース。
それを、先輩は僕に差し出してきた。

「?」

「ほい。 お礼。」

「え?」

お礼…ってなんの? 僕、先輩はお礼をもらうようなことは何も…してない…よね?

ジュースを受け取った僕が首を傾げていると、また先輩が面白そうに笑った。

「さっき、無理矢理演奏させちゃっただろ? 演奏してくれてありがとうってこと。」

「ぁ…」

なるほど。 でも、無理矢理ってことはない。
それを、ちゃんと伝えないといけない…よね?

「でも…あのっ…僕…」

「?」

楽しかったって…ちゃんと…ちゃんと、先輩に言わないと…

「先輩方と一緒に…あの…演奏できて…そのっ…た、楽しかった…です…」

「………」

ひ、ひぇ~…は、恥ずかしいよぉ…あ、穴があったら入りたい…です…
先輩何も言わないし、こんなこと言われたらうっとおしいと思われるかなぁ…?

怖くて先輩の顔を見れずにうつむいていると、ポンポンと頭を優しく撫でられた。

「ん。 俺も楽しかったよ。 ありがとな。」

「あ…は、はいっ!!」

顔を上げると、先輩は嬉しそうに笑っていて…
一気に安心した。

ちゃんと言ってよかったぁ…誤解されてままなのは、やっぱり悲しいよね…うん。

「にしても、お前めっちゃ上手いな。 中学でジャズやってたのか?」

「あ、え、えっと…その…僕の父がジャズをやっていて…あの…それで、僕も小さい頃から一緒に…やっていて…」

「お父さんと?」

先輩の質問に、こくりと頷く。
一颯君にはこの話したけど、一颯君先輩には僕の父のことは言わなかったみたい。

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