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エール

第1章 リーヴル

カードのバーコードも読み込んで、はいと和希君に手渡す。


「あ、ありがとう。」



和希君は渡した本をパラパラと捲りながらポツリと呟いた。


「...結構字数あるんだな。」



「え?何か言いました?」



よく聞き取れなくて聞き返すと、何でもないというように首を振る。


まあ、いいや。和希君が何でもないって言うんだったら。



「じゃ、ありがとな!」


「あ、良かったら感想聞かせてくださいね。」



私の言葉に手を振ることで答え、和希君は図書室から出ていった。


「行っちゃった。」


また、和希君と会話が出来た...。



急に静かになった部屋の中、和希君との距離を少しでも縮めてくれた「本」と「シャーロックホームズ」に感謝した。



...そして、いつか「和希君」と呼べる日が来ることを願って...。

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