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桜のみち

第1章 サブマネ

押し寄せるファンのユイコールが、空気砲で発射した塊のように壇上の巨大ディスプレイを揺らす

呆然と立ち尽くすユイは、舞台袖の暗がりでもキラキラしていた

「いつも通り…ね? ユイ、誰もがステージで踊れるわけじゃないんだから、もっと楽しんでよね」



ユイの目は瞼に描いたように、まったくの不動だ

私はユイのふっくらとしたほっぺたを片手で鷲掴みする

「こらぁーー ユイ! しっかりせんかーー!」

「は、はいム!」

今日初めて中枢神経に電気が走ったのか、ユイは長い眠りから覚めた

「終わったら、焼肉に連れて行ってあげるから、完璧にしなさい! カンペキに!」
「は、ハム!」

私はアスリートを送り出す監督のように、ユイを舞台に叩きやった



ユイを見つけた会場のアリーナは狂喜した

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