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第9章 ☆本当の気持ち

「…………お待ちしておりましただなんて、紛らわしい言い方をしてごめんなさい」




翔ちゃんの後ろ姿を目で追いながら、波留くんは小さい声で続ける。




「初回限定用に作ったギフト袋。

奥様がチョコレートが大好きで。

予約されたお名前が “ 宮本 ”

………普段から鈍感な僕でも、すぐに彩さんのご主人様だって分かりました」


「……………っ」




街灯に照らされて、彼の髪が金色に光る。


音色のような美しい声で


あの時と同じように


波留くんはもう一度、私を彩さんと呼んだ。




「3日前のお昼過ぎにご来店されたんです。

仕事の合間に来られたそうで、さっきのガトーショコラをご予約だけして、すぐに飛び出していかれたんですよ」


「………仕事の合間!?」




驚き過ぎて、思わず声に出てしまった。


……3日前なら、1番忙しい月曜日だ。


仕事の鬼である翔ちゃんが、わざわざケーキを買う為に会社を抜け出すなんて……


あ、ありえない……




「……………っ」




まだ半分も理解できていないけど


目頭が熱くなる。


………信じられないよ………

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