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第10章 ☆それだけで、幸せ


駅からマンションまで続く並木道は、きれいに整備された石畳みになっていて


銀杏の木々が季節毎に表情を変える、私のお気に入りの通りだ。


落ち葉がひらひらと散って、街灯に照らされる美しい光景の中


木の下でタバコを吸っている、細マッチョで色黒の翔ちゃんは


どう見ても、その繊細な冬景色には似合っていなかった。




そして


その手に持つピンク色の紙袋が、さらに違和感を醸し出している。




だけど


私は初めて恋をした少女のような気持ちで、彼の近くに駆け寄った。




「………翔ちゃん………」




白い息が宙を舞う。


私が翔ちゃんの前で止まると、彼は吸殻を携帯灰皿に押し込んだ。


ドキドキが、止まらない。




「………そのケーキ。
私の為に買ってくれたんだよね……?」




当然、分かってるけど。


言わせたくて、敢えて聞いてみる。

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