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♡*:。.rena's world story.。:*♡

第15章 ★5分の差

.。.:* side 蓮 *:.。.。.:**:.。.。.:**:.。.。.:*



「鈴木、帰国したばかりですまん。
例の件についてなんだけど」




取引先へのメールが送信されたタイミングで、後ろから上司の声が聞こえた。


そうだ、報告資料の提出……と山積みのファイルに手を伸ばす。




「部長、あと1日ください。
最後資金を反映させて終わりなんですが、仕入の……」

「いやいや、報告書の話じゃない」




俺の話を遮り上司は笑うと、隣りの空いてる席に座った。


集中していて気付かなかったけど、腕時計の針が夜の10時を回っていて


それでも、このフロアにはまだ数百人という社員が残業を続けている。


いつもと変わらない、社内の光景だ。




「なんだ、もう明日には提出できるのか。
相変わらず何もかもが早いな。
お前の24時間どうなってるんだ」

「素晴らしいご指導のお蔭ですよ。
尊敬するOBの部長が直属の上司なんですから」

「ははは、言ってくれるな。
気分がいいから今晩行くか」

「ホテル以外なら、どこでも」




こんな会話は日常茶飯事だけど、上司はデカイ体を揺らして豪快に笑う。


俺と同じ大学を主席で卒業し、当時のラグビー部副主将。


50歳を過ぎた今でもその威厳ある風格は健在だ。




「この俺にそんな返しができる若い奴はお前くらいだよ、鈴木。
俺の恋人にならないなら、代わりにうちの娘はどうだ」

「残念ながら、彼女いますんで」




そこだけ真面目か!と突っ込む上司と俺を見て、周りの同僚たちがケラケラと笑い出す。


金と出世の為なら、蹴落としてでも伸し上がるのが当たり前なこの会社でも


俺のいる部署は、上司を中心にいい連中が集まっていた。

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