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♡*:。.rena's world story.。:*♡

第16章 ★行かないで

美和から少し体を離して、携帯を取り出すと


蓮からの折り返しだと思っていた俺は、その着信画面を見て息を呑んだ。



「…………」



耳に押し付けた電話の向こうで、車のクラクションと風の音が響く。


その雑音に混じって、小さくすすり泣く声が聞こえた。




「………おい、どうした」

『………っ……ヒメ……』




いつもと違う弱々しい掠れ声。


それでも、微かな嗚咽の後で、その声はハッキリと続いた。




『……ごめん、ヒメ。
ひとつだけ、頼みがあるんだ』


「………頼み?」


『急に本社から呼び出されたって、蓮に伝えて』


「…………!!」


『お願い。

………こんな自分勝手な我儘

あたしの同僚で、蓮の親友のあんたにしか頼めない』




ドクっと心臓が鳴る。


……こんな時間に本部が呼び出すわけねーし


そんなの自分で言えよとツッコミたくなる依頼。


だけど


初めて聞いた涙声のヒカルが、そのまま電話を切ろうとしたので


携帯を握る手に、自然に力が入ってしまう。

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