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第19章 ★幸せの花びら

………………………………………………


「おぉ、めっちゃキレイ」




定食屋を出て駅まで向かう途中


ビルの狭間の小さな公園に、桜の木があって


その花びらが、夜風に乗って歩道まで舞い散っていた。




「ヒカル、終電乗り遅れるぞ」

「少しだけ!」




蓮の静止を聞かず、あたしは公園の中へと入っていく。


両腕を回しても届かないくらい、太い幹。


街灯の光に照らされて、ピンクと緑がキラキラと光る。


4月中旬になった今、半分はもう新緑の葉に変わっていた。




「今年は遅咲きだったから、まだ花びらが残ってるんだね」

「…………」

「満開で咲き誇るのは、ほんの一瞬か……」




そっと幹に手を添えて、下からその揺らめきを見上げる。


風に揺れて重なり合う桜を見ていると


同じ呼吸をしているようで、心が穏やかになってきた。



「……………」



………うん、なんかスッキリしたな。


後ろから近付いてくる蓮の気配を感じながら、素直にそう思う。


バレていた上に、まさか定食屋で過去の話まで聞くとは思ってもみなかったけど


自分の想いを相手に知ってもらえただけで、幸せだよ。



………蓮が、その機会を与えてくれて


本当に良かった。

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