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……人間の『慣れ』って、怖い。

私は今、身に染みてそう思う。




「え？ こんなにもらえんの？
彰、クーポンくれるって」

「……いいから。
先に外に出ててくれよ」




お店のレジの前で、大量に割引券を渡された隼人。

それを自慢げに揺らす彼を見て、立花はため息をついた。


立花の制止も聞かず

ロボットのような動きで会計の対応をする、女の店員さんに向かって

隼人は甘く優しい声で続ける。




「君、手が震えてる。
体調悪いんじゃない？」

「………隼人。
それはお前のせいだから」

「女の子なんだから、無理したらだめだよ。
ほら、彰も言ってやれよ。
この子、きっと普段から頑張ってる」

「………酔っ払い相手って疲れると思うから。
あまり頑張りすぎないでね」




２人がそう言って微笑んだ先で

アルバイトの女の子は、泡を吹いて失神する寸前だ。



「………………」



この２人が一緒にいる姿は、当たり前のように見慣れていたから

………忘れてた。


２人は振り返ると、私の顔を見て首を傾げる。



「由宇？」

「咲原？ 」




最強にかっこいい男だということに

本人達は気付いていない。