仰せのままに
第4章 可憐様。
「綺麗な髪ですね。」
私が発した言葉ではない。
「勿体なきお言葉です。」
「そんなに、敬わないでください。」
悲しげな顔でさえ、可愛いのだから、
「和也様の、彼女様なら、
いつか使える日が来るかも知れませんので。」
少しでも、抵抗したい。
この子に、気を許してしまう自分から。
「かれん、満足した?」
部屋で、紅茶を飲んでいた、和也様に、
「和くん、ありがとう。」
カレン様は、微笑む。
「ありがとうございました。」
「いえ、満足していただけたのなら、幸いです。」
二人の空気は、私にとって、
どうしようもなく、息がしづらい。
「失礼します。」
出ていく、直前。
「ありがと、真子。」
私はバカだ。
この一言を聞ければ、それでいいと想うのだから。