仰せのままに
第1章 お帰りなさいませ。
「はぁ、っ、あぁっ、ッンッ…」
方耳に入ってるイヤホンに鮮明に聞こえる、
ソウイウ声。
抱いてる犯人は、言わなくても分かる。
別に、和也様に、むやみに抱くなとは、言わない。
てか、言えない。
ただ、相手のメイド。
服に付いてるマイクくらい、はずす余裕はないのか。
屋敷中の従業員に聞かれてる。
なんて、知らないよね。
スピーカーから聞こえる、和也様の吐息が聞こえる度に、
握りしめた、洗濯物が、シワを寄せる。
ポケットのイヤホンのスイッチを切って、
和也様が、袖を通すであろう服を、
丁寧に、アイロンをかけて、
畳む。
私のこの気持ちも、
アイロンで、薄く伸ばして、畳んで、
心の奥底。
私でも知らない場所に隠せたら、
どんなに楽か。
でも、
ズルい私は、
好きじゃないフリをして、
抱かれようとする。