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I'll be with you.

第16章 折りたたみ傘

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やっとの思いでタクシーを拾って、ただ家とは反対方向へと向かった。


ビルばかりで気が滅入りそうになりながらも、見るところがない俺はずっと暗くなった夜空を見ていた。


ビルの影に見え隠れする夜空に、焦れったささえも覚えた。




……まだ、結果聞いてなかったな



優のこと置いてきちゃったな……




いろんなことを思ったけど、それすらも楽しく思えた。



「……傘も返してないな…」



鞄の中から借りていた傘を出して、ただ握り締めた。



いつでも返せるように、いつも鞄の中に入れてた傘。



今度会ったら返そうと思ってた。




「……今度会うときは…………」




もう、俺じゃないかもな……




《 奏斗 》




「……橘 奏斗」




本当の自分は?





どれも偽者だったな……








《 あなたは橘 奏斗なの…!! 》







「mina……





ミナ……





……陽…





……星澤 陽…」








奏斗を見付けてくれたのは……








「……陽だけだったよ」






それだけで、十分だ




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