I'll be with you.
第16章 折りたたみ傘
「今日はもう遅いから帰りなさい」
今日” は ”……
「……はい。失礼します」
俺は、ご両親に一礼して病室を出て行った。
そして、病院を出て駅まで歩いた。
途中、目の前が真っ暗になって立ってることすらままならない。
やっとの思いで歩道の端に寄り壁に手をついた。
フワフワした体の感覚。
もうヤバイなって自分でもわかってる。
それでも、外の風に当たりたかったんだ。
……みんながいた時は、ちゃんとお兄ちゃんでいられたのにな…
辛くても、苦しくても、シッカリ自分を保てたのに……
「……ずっと、向き合ってかなきゃいけないんだな」
もう、わかったよ
「……逃げ場はないんだ」
自由はないんだ
また、演じればいいんだろ……?
そんなの、簡単だよ…ッ 簡単すぎ……
「亜美が望む” カナくん ”になればいいんだろ……?」
それが、亜美の幸せなんだろ…ッ…?
「……演じるのは得意だろ?
もう慣れっこだろ…?
……奏斗…ッ!!」
泣くな……俺…
……これから変われるよ。
亜美を愛せるように