I'll be with you.
第3章 心君のお仕事が見てみたい!
エレベーターが閉まると心君はクルッとこちらに振り返り、いつもの心君に戻っていた。
「いらっしゃい。
一番いい部屋取ってくれたらしいから今日は楽しんで」
『あの……その部屋って一体おいくらなんでしょうか…?』
心君は私達を見ると、右手を左胸に当ててお辞儀した。
「お食事付きツインで48000円でございます」
『「「よんまんはっせん!?」」』
すると心君は、帰ると言い張る私達を見て声を上げて笑った。
「地元割引と私の知人割引でお一人あたり7200円になります。
それでもお帰りになられますか?」
エレベーターを降りて、部屋までの道をブツブツとそれぞれ考えながら歩いていた。
「ツインで48000円ってことは、
1人24000円で……
地元割引と知人割引で7200で……
だから、48000円の部屋に7200円で泊まれて……」
「俺は騙されてるのか……?
48000円の部屋が7200円で済むのか……?
これは美味しい話なのか……?
やっぱ騙されてるのか……?」
『これは夢よこれは夢よこれは夢よこれは夢よ…!』
そんなこんなであっという間に、部屋に到着してカードキーを差し込むと心君は部屋の中に荷物を置いた。
「はい、電気はここな。
隣の部屋のカードキーも置いておくから荷物勝手に置いてきて。
オートロックだから部屋にカードキー置いたまま居なくなるなよ。
浴衣はあそこにあるし温泉もあるから。
温泉は22時までな」
心君はサラッと部屋の説明をするけど、そんな説明が耳には入らない。
だって……
「すっげぇーー!!
超眺めいい!!広いし!
ここから外出れるぞ!!」
「コウ!こっち来てみろよ!!
すんげぇのあるぞ!!」
こんな部屋に泊まったことないよ……!!
さすが48000円のお部屋!!
「俺、仕事あるからもう行くぞー。
本当は俺が案内する人じゃないし。」
『じゃあなんで案内したの!?』
すると、心君は欠伸をして頭をかいた。
「知人の僕が案内した方がお客様も接しやすいのでは?
って言ったら、鍵くれたから」
心君はそれだけ言うと、
じゃ、また夕食で!と言って部屋を出て行った。