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夜が明けても傍にいて。

第19章 涙のbirthday

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玄関に入ると莉菜の可愛らしい靴は置いてあるのにとても静かだった。


リビングに通じるドアの向こうには鼻息を荒くしたハナが居ることだけはわかった。


ゆっくりドアを開けて真っ先に飛び付いて来たハナに返事がある訳でもないのに


「ハナ、莉菜は?」


そう聞いていた。


ハナは俺の言葉を理解したのか、俺を振り返り見ながらキッチンまで連れて行った。




「こら、ハナ…教えちゃ駄目じゃないっ。」


キッチンの中から莉菜の小さな声が聞こえた。


---その後、



パーーン!!♪



クラッカーの音と共に愛しい莉菜がひょこっと顔を出した。



「慎也、28歳おめでとう!!」



「莉菜…。」


「せっかく隠れてたのに、ハナったら…。」


ハナに膨れて見せる莉菜。
訳がわからなくても叱られたと悟って悄気るハナ。



そんな二人を見て俺は…三人で暮らしたい。


...そう思った。




ゆっくりと莉菜に近付き、莉菜の気持ちを探るように、壊れ物に触れるように

優しく優しく抱き締めた。



「俺…誕生日だったのか…。」


「慎也…忘れてたの?」


「あぁ。」


クスッと俺の腕の中で可愛く笑う莉菜。




俺の誕生日なんてすっかり忘れていたよ…。


莉菜のことで頭がいっぱいだったから。

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