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霧霞ノ桜蕾

第3章 引キコモリニートノ恋愛事情*年下攻メ/天然/純情




──幼い頃から僕は、人と話したり
関わったりするのが大の苦手で
その性格も手伝ってか、大学卒業後、就職する事は叶わず、
今はニートとして気ままに(ちまちまバイトもして)生活している。

けど、けどやっぱり


「いらっ、しゃいませ……っ」


人が怖いです……っ(泣)

ビクビクと、内心怯えながら
レジに来たお客さんと目を合わす事なく、一連の作業を(若干震えながら)行う。

店長の馬鹿…!薄情者…っ!

来る筈だったバイトさんの代わりとはいえ…
どうして僕がこっち(レジ)なんだよぉ…!?
別に陳列棚担当でも良かったじゃないですか…っ!

俯きながら、「絶対許さん…!」と心に誓う。


「──あのー…?」

「ひゃいっ!?」


あっ、か、噛んだぁあっ。こ、これだから…っ!
うぅ…泣きたい……(泣)

かぁあっと、頬に熱が溜まっていくのが分かる。

お客さんも、それに気付いたみたいでくすっと笑う。

わ、笑われた…っ。


「─“真中”さん、っていうんだ?可愛いね。
…“アイツ”、全然教えてくれないから…。
…ねぇ、良かったら…──」

「オイ」


ニコニコ微笑みながら
言葉を紡ぎ続ける男の人の声が、
記憶の中に有る高さよりも少し低くなった、ドスの利いたある人の声で遮られる。


「何人のもんに手出してんの、樹」

「いててっ。ちょっ、そんな蹴んないでよ」

「…斎藤くん……?」


ほっと、安堵の溜め息を漏らす。

男の人の隣に立ち、足をげしげし蹴りまくる
少し長めの茶髪の人の名は“斎藤春也”くん。

僕が今住んでいるアパートの、隣に住む現役高校生。

そして僕が、家族以外でまともに話せる、唯一の人だ。

─それよりこのふたり…お友達?
“イツキ”って、言ってたし…。


「うん、友達。悪い奴じゃないから怖がんなくて大丈夫だよ」

「う…、……ん?声に出してた?」

「顔に書いてある」


なでなでと、何故か頭を撫でられる。

「そっか」と、ふわりと微笑めば赤くなる
斎藤くんとイツキくん…(だったかな?)の顔。

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