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霧霞ノ桜蕾

第3章 引キコモリニートノ恋愛事情*年下攻メ/天然/純情


──────
────
──…



─広がる藍空。
マフラーを巻きながら、冷たい空気に震えを覚える。


「──ヒロさん」

「斎藤くん。やっぱり寒いねー…。
…あ、イツキくんは…?」


裏扉を閉め、小走りになりながら
斎藤くんの元へ急ぐ。

若干見上げながら首を傾げ
不思議に思った事を微笑みながら問う。

だけど返されたのは、無言と言う名の沈黙。


「……………」

「…?斎藤くん?」


そっと顔を覗き込む。


「─春也」

「へ?」

「“斎藤くん”じゃなくて名前で。俺の事
“春也”ってそう、名前で呼んで?」


突然の申し出に、目をぱちくりさせる。


「え?…えっとじゃあ…─春也、くん?」

「っ、…うん。それがいい」

「…?顔、真っ赤だよ?………あっ!風邪引いたのかな!?
ごめん!結構待たせたよね!?
は、早くかえ……」

「ヒロさん」

「っ、わぁっ…!」


ぐいっと突然腕を引かれ、そのままぐらりとバランスが崩れ
斎藤く……じゃなかった…しゅ、春也くんの胸へダイブする。

とくん、とくん…と、
一定のリズムで奏でられる春也くんの鼓動。

戸惑いを、隠す事無く見せる心。

何故か、鼓動が早くなる。
顔が熱い。


「春也くん…?どうしたの?
早く帰らないと…風邪、悪化しちゃうよ?」

「大丈夫。二度と治らない病気なら
当の昔から抱えてるから」

「え…えぇえ!!?じゃあ尚更だよ!早く…─」


ちゅ


「──うん。少し軽減したかも。
帰ろっか、ヒロさん」

「…あ…、う、ん……?」


今まで見た中で、
一番輝いて見えた春也くんの笑顔。

ぬくもりから解放され
今度は掌に逃げる猶予も無く与えられる。

──え…え?今…─


「…あ、ねぇヒロさん。カレー作ったんだけど食べてく?
ヒロさんの事だから夜ご飯、まだでしょ?」

「あっ、うん。あり、がとう」

「いーえ。…人参もちゃんと食べるんだよ?」

「が、がん、ばる…!」



──あぁ、今が夜で、暗くて良かった。

マフラーを、口の所まで隠す。


「…──ねぇヒロさん?」

「は、はい」

「大好き」

「…っ!!」


───だって僕今すごく、変な顔、してる。



(──…脈ナシでは無いか。よし)キラッ




 ーfinー

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