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嘘でもいいから

第14章 重大な間違い~想side~

少し歩いてから
ふと振り向いてみると…
優花も振り返るように
こちらを見ている。

でも
冬にしては強い日差しを
背中に受けて…


優花の表情は黒い影になり
よく見えなかった。


でも俺は今でも
ありありと思い出せるんだ。


その時、優花がしていた筈の表情を。


優花が俺だけに
何の曇りもない表情で向ける
その笑顔を。


それは
俺を兄としてじゃなく
愛しい恋人を見る目で見た
最後の瞬間だったんだ。


見えなかった筈のその笑顔は
プロのカメラマンが撮った
一枚のポートレートのように
俺の胸に生涯焼き付いてしまったんだ。

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