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カード×ロワイヤル-異世界転生への奇妙な旅-

第1章 第1話 運命のカードに身を任せる


俺は思わずまるで地獄の恐怖に突き落とされた様な声を叫んでしまう。しかしサングラスの男の人はサングラス越しに悲しみと優しさを兼ね備えた目をしていた。

「裕香様。子供が1人居ました。」

「この子だけか?」

「はい…」

「くっ…もう少し早ければ!」

サングラスの男の人は俺を軽々と抱えながら裕香様と言われる女の人は、苦虫を噛み潰した様に壁に殴り付ける。

「済まない坊主…私達のせいで、こんな事になってしまって…」

裕香様は本当に、本当に申し訳なさそうに少しだけ涙を浮かべながら顔を下に俯かせながら俺に言う。

「お母さんが言ってた。人が本当に謝ってくれた時は許してあげなさいって。だから僕はお姉さんの事を怒ったりしないよ?」

「…」

「そうか…優しいんだな坊主は。」

すると裕香様は俺の頭を優しく撫でながら涙を流す。まるで、お姉ちゃんの様に優しい笑顔で…

それから俺は裕香様、いや裕香さんとサングラスの坊主頭の男の人であるザンギエフさんに引き取られた。

裕香さんは裏社会の女王って言われる程の凄腕の掃除屋(スイーパー)でザンギエフさんはその助手だって後から聞かされた。

裕香さんとザンギエフさんに連れて来られたのは寮だった。そこは裕香さんが事件や事故で親を無くした孤児が集まる場所で裕香さんの裏社会での依頼報酬を注ぎ込んで作ったらしい。

俺の他にも事件や事故で親を無くした身寄りの無い子供達が居て小学校、中学校までは行かせて貰い、高校は自分達で働いて行けってのが寮のルールらしい。

そこで今の俺は定時制の学校を希望して働きながら1人暮らしをして学校に行っている。

寮に居た人の中には裕香さんの裏社会の仕事をして生計を立てて居る人もね。正直、俺には怖くて出来ないし何よりも夢がある。

それは料理人になって自分の店を出して俺の料理を美味しいって言いながら笑顔にさせる事だ。

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