テキストサイズ

シアワセ

第1章 始まりと終わり



いつものようにルームに向かいドアをあけると

すでにワインをグラスに注ぎ腰かける後ろ姿がうつる。

酔っぱらいかしら…

そう思い彼の肩に手をかける

「……あの?」
「…!」

驚いたのか彼はビクリと振り返る

「ご、ごめんなさい。清華です」
「……あぁ。君が」

そう微笑んだ彼は優しそうな瞳をしていた

高そうではないが、そこそこのスーツを脱ぎワイシャツのボタンを胸近くまであけ
ネクタイを緩めている

真っ黒の髪は短く、少し無造作にセットされ
黒縁のメガネをかけた彼。

私より年は上だろうか

イケメン、とはこういう人を言うのだろう

「……」

でも、どうせ体目当てだろう

「もうお酒を?」
「うん」
「注ぎましょうか?」
「いや。君は?飲まないのかい?」
「……では、お言葉に甘えて」

酔わせて襲うパターンかしら

「……さっき」
「え?」
「ベランダにいたのは…君だろう?」
「あ、……あなたは」
「……さっきの男」

そういって微笑む彼

「そうだったんですね。初めてですか?」
「そうだね。あぁ……自己紹介がまだだったね」
「……」

なんだか、不思議な人

いつまでたっても襲ってこない

「……城端喜一。27だよ、君は?」
「清華です……20になります」
「本名は?」

え?

いま、この人、なんていったの?

「……え?」
「?…だから、本名は?」

ソファの横の私を覗き見る

「……それ、は言えないんです」
「そうかぁ。残念だな」
「……城端さんは…変な人ですね」

思わず吹き出してしまった

「……どうして?」

きょとんとしてる城端さん

「……だって、普通の人なら、すでにベッドですし…本名なんて、聞かれたの初めてですよ」
「……ベッドねぇ。行く?」
「…私に聞かないでください」

またもや笑ってしまう

本当に、変な人だ

「まぁ俺は…元々、そういうのをヤるために来た訳じゃないんだよ」
「え?」
「まぁ……少しぐらい、らしいことはしようか」

そういうと彼は私をソファの上に押し倒した

あぁ。
やっぱり…この流れか

幻滅した訳じゃない

ただ、少し安心していたから
彼は、他の人とは違うのではないかと

少しほんの少し期待してしまったのだ

私は、彼の頬を撫でて首に腕を回す


ストーリーメニュー

TOPTOPへ