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君の隣の相棒さん、

第41章 覚めない夢、(大)

今一番逢いたくて、同時に一番逢いたくなかったあの人が私のそれを止めた。
無意識に震える手からハサミが落ちるとあの人の手が私の手を包み、そのあとで私自身を包んだ。


─────あの人は気付いていた。
私があの人の中にいる湊という人物に苦しんでいること。
そして、もう限界を迎えていたことも…



『私‥わたし‥‥っ』



暫く触れることを拒んでいた私に、今はあの人から私に触れてこんなにも近くで感じている。



「頼む‥‥頼むから君まで私から離れないでくれ‥私の前からいなくならないでくれ…ッ!」



あの人の叫び声が耳に響く。
震えた肩がピクリと跳ねて私を正気に戻す。
足元に転がるハサミは私がしようとしたことを思い出させて、ぎゅっとあの人の腕に込められた力に私はそって手を添える。



『…私は此処に居ます。貴方の傍にいます』



視点が変わると安心したあの人の顔が目の前にあって、口づけられていることが分かる。


その時、鏡には私とあの人、そして私に重なるようにして“彼”が写っていた。
彼は私を見て意味深に笑みを浮かべると消えた。

次の瞬間、私の中に入り込んで来た何かが私の口を借りて言葉を発した。





(『愛 し て る』)

























─────今のは一体、誰?




(覚めない夢、)
(いつか、貴方の心を私で塗り替えて)

(そして、堕ちていく。永遠の眠りへ‥‥)

END

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