君の隣の相棒さん、
第48章 カラフルドロップ(SS)
「何でこんなことに‥‥」
『…面白そうじゃありませんか』
刑事が声優の仕事なんて一生でも一度あるか分かりませんよ、と彼女。
俺と彼女は今、声優達が集うアフレコ室にいる。
声優絡みの事件があって以来、“いい声をしている”とその場にたまたま居合わせた何故かどっかの警部補に似た男装姿の彼女も呼ばれた。
正直、全く乗り気ではなかったが楽しそうにしている彼女を見ていると何だか帰る訳にもいかず、仕方なく引き受けたまでは良かったが‥‥
「何故BL…?」
『私達じゃなくても良かった気が…』
二人で焦りを感じているとプロデューサーが、二人はBLが合う!と笑っていた。
しかも台本を見れば俺と彼女の名前がそのまま使われていたので唖然とした。
台本の後半から最後にかけたところには二人なりの“アドリブ”をと書かれている。
『アドリブ、ですか…』
初心者にアドリブ…思わず溜め息をつくと横にいた彼女が大丈夫ですよ、と微笑んだのに俺はただ頷いて応える。
大きく息を吸い込んだ俺と彼女は、目の前に映し出された映像に声を吹き込み始めた。
吹き込み始めてすぐ、耳に心地いい普段の彼女とは違う声が響いた。
その声に驚きながら俺も台詞を読む。
『あの‥さ、ずっと言いたかったことがあるんだけど…』
「ん?なんだよ、改まって」
いよいよラスト。アドリブのシーンだ。
不思議と、映像に吹き込んでいるはずなのに俺自身が彼女自身に呼ばれた様な気分にさせられていた。
『俺‥‥、俺、桜井のことが好きだ』
「っ‥‥梓っ‥」
『もう一度しか言わない。桜井のことが‥憲一のことが好きだ。…もうどう思われても構わない。俺はお前がす‥‥‥っ』
彼女は台詞を言う際、俺の方にマイクごと身体を向けて言った。
キスシーンの後の俺の台詞。彼女の真剣な表情に合わせるように、俺も吹き込んだ。
「俺も、紫音のことが好きだ」
『けんい‥‥っ』
もう一度キスシーン。そこでOKが出され、無事アフレコは幕を閉じた。
その帰り道。俺はアドリブの時にどんな気持ちで言っていたのかを知りたくて彼女に聞くと‥‥‥
『‥‥真っ直ぐ、ありのままを声にしました』
不意に、ドキリと高鳴る鼓動。
これは一体‥‥‥。
(マゼンタな苺味)
(官能的。その声と気持ちにノックアウト)
『…面白そうじゃありませんか』
刑事が声優の仕事なんて一生でも一度あるか分かりませんよ、と彼女。
俺と彼女は今、声優達が集うアフレコ室にいる。
声優絡みの事件があって以来、“いい声をしている”とその場にたまたま居合わせた何故かどっかの警部補に似た男装姿の彼女も呼ばれた。
正直、全く乗り気ではなかったが楽しそうにしている彼女を見ていると何だか帰る訳にもいかず、仕方なく引き受けたまでは良かったが‥‥
「何故BL…?」
『私達じゃなくても良かった気が…』
二人で焦りを感じているとプロデューサーが、二人はBLが合う!と笑っていた。
しかも台本を見れば俺と彼女の名前がそのまま使われていたので唖然とした。
台本の後半から最後にかけたところには二人なりの“アドリブ”をと書かれている。
『アドリブ、ですか…』
初心者にアドリブ…思わず溜め息をつくと横にいた彼女が大丈夫ですよ、と微笑んだのに俺はただ頷いて応える。
大きく息を吸い込んだ俺と彼女は、目の前に映し出された映像に声を吹き込み始めた。
吹き込み始めてすぐ、耳に心地いい普段の彼女とは違う声が響いた。
その声に驚きながら俺も台詞を読む。
『あの‥さ、ずっと言いたかったことがあるんだけど…』
「ん?なんだよ、改まって」
いよいよラスト。アドリブのシーンだ。
不思議と、映像に吹き込んでいるはずなのに俺自身が彼女自身に呼ばれた様な気分にさせられていた。
『俺‥‥、俺、桜井のことが好きだ』
「っ‥‥梓っ‥」
『もう一度しか言わない。桜井のことが‥憲一のことが好きだ。…もうどう思われても構わない。俺はお前がす‥‥‥っ』
彼女は台詞を言う際、俺の方にマイクごと身体を向けて言った。
キスシーンの後の俺の台詞。彼女の真剣な表情に合わせるように、俺も吹き込んだ。
「俺も、紫音のことが好きだ」
『けんい‥‥っ』
もう一度キスシーン。そこでOKが出され、無事アフレコは幕を閉じた。
その帰り道。俺はアドリブの時にどんな気持ちで言っていたのかを知りたくて彼女に聞くと‥‥‥
『‥‥真っ直ぐ、ありのままを声にしました』
不意に、ドキリと高鳴る鼓動。
これは一体‥‥‥。
(マゼンタな苺味)
(官能的。その声と気持ちにノックアウト)