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恋してキスして抱きしめて

第13章 夏の嵐

ビクッと震えた朱莉の左手に、自分の手を添えて


その薬指に光る金属を見ながら……静かに腕から離させた。



「元カレをからかって、楽しい?」

「………っ」

「人妻の、暇つぶしってやつ?」



“ 戻れるなら、もう一度…… ”


……なんだそれ。


今更、何言っちゃってんの?


俺の知らない誰かと、永遠の愛を誓ったその印。


……せめて、外してから言うとかできねぇの……?




「知ってると思うけど。
……俺、人のもんには興味ねぇんだ」




………ずりぃ女


俺がまたお前を抱きしめると思っていたのなら、とんだ思い違いだ。


残念ながら、その差し出された手を取ることはできない。



“ あの頃と、全然変わらないね ”



……残酷な程、良く分かってるな。


どんなに変わろうとしても、人は変わることができると言い聞かせても


“ 忘れる ” ことが出来ない以上、結局、想いを捨てることも出来ない。




「……ユーリ……」




消えそうな声で呟いた朱莉を、まっすぐ見ていたこの時の俺は


坂道の下から視線を送る……千夏の存在に


気付くことはできなかった。

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